雨音

MoCoのオリジナル台本です。利用規約を読んで楽しく使ってください。

佐藤 翔太 (さとう しょうた)(5歳)♂(♀)

お母さんとの買い物が大好きでいつもお菓子をねだる。甘えたがり

佐藤 早苗 (さとう さなえ)(30歳)♀

息子との買い物が好きでよく一緒に出かける。特にショッピングモールに行くことが多い。

店員・通行人・ガヤ・自衛隊員 ♂ 


早苗:♀
翔太:♀
店員・通行人・ガヤ・自衛隊員:♂





早苗:「今日は小雨かー。天気予報ではそんなに強くならないみたいだから、
    翔太も連れてお買い物にでも行きたいな。」

早苗:「翔太、今日ママとお買い物行かない?」

翔太:「行くー!ママとお買い物好きだから。」

早苗:「そうだ!翔太の大好きなメロンクリームソーダ飲もうか。
    好きなお菓子も、買ってあげるね。」

翔太:「やったぁ。メロンクリームソーダとお菓子ーー。」

早苗:「よし決まり。服着替えなさい。雨強くならないうちに行くわよ。」

翔太:「うん!」




早苗:「雨そんなに強くなくてよかったわね。翔太、長靴よく似合ってるわよ。」

翔太:「えへへ。この靴好きなの!ママとパパが誕生日に買ってくれたから。」

早苗:「黄色い傘も可愛いわね。ちゃんと傘さしましょ。濡れたら風邪引くわよ。ふふっ」

翔太:「この傘も好きなの!はぁい。病院は嫌だもん。」

早苗:「ほらちゃんとおててもつないでね。」

翔太:「(適当に口ずさんでください)水たまりチャプチャプランランラン」

早苗:「すごくご機嫌ね。そんなにメロンクリームソーダ楽しみ?」

翔太:「うん!美味しいもん。」

早苗:「そっかそっか。この階段降りたら地下街に着くわよ。」

早苗M:「それにしても雨、強くなってきたわね。
    天気予報ではこんなこと言ってなかったのに…」

早苗:「翔太、今日は早く帰るわよ。」

翔太:「えー。ママとお買い物楽しみたいぃ」

早苗:「ここの階段滑るから気をつけてね。」

翔太:「大丈夫だよ。転んでも泣かないもん。」

早苗:「怪我したら大変でしょ。ほら滑った。おててつないでてよかったね。」

早苗:「とにかく、メロンクリームソーダのお店行こうか。」

翔太:「うん!メロンクリームソーダ。やったぁー」


店員:「メロンクリームソーダお二つお待たせいたしました。
    どうぞごゆっくりしていってください。」

早苗:「ありがとう。きたわよー。今日のアイスおっきいね。」

翔太:「おいひい。」

早苗:「美味しい?。よかったよかった。よしよし。」




早苗:「ごちそうさまでした。さ、買い物を済まして早く帰りましょ。
    行くわよ、翔太。」

翔太:「お菓子!これとこれと…これも!」

早苗:「だーめ。お菓子はひとつだけっていうお約束でしょ?」

翔太:「はぁい。じゃぁこれ!」

早苗:「これね。このお菓子好きね。いつも最後に選ぶのが、このお菓子だもんね。」

翔太:「うん!パチパチってするのが美味しいのー。」

早苗M:「懐かしいわね。私もずーっとお菓子ねだってたな。」

早苗:「さてと、買い物も終わったし帰りましょ。」

早苗M:「この地下まで、雨が流れ込んできているけど、
    近くの川の水位大丈夫かしら…」

早苗:「早く行くわよ、翔太。」

通行人:「雨足が凄く強くなってるぞ。川の氾濫は大丈夫なのか?」

ガヤ:「わー!近くの川で氾濫が起こった。
    一気に水が入ってくるぞ。早く、早く避難しろー!」

早苗:「翔太、早く避難しないと。急いで翔太。」

翔太:「動きにくいよぉ…。」

早苗M:「水流の強さに翔太の足が持ってかれてる。」

ガヤ:「走れー!うわー!」

早苗:「すみません、道を塞がないで。小さい子供がいるんです。
    道を開けて頂けませんか。」

早苗:「翔太、絶対におてて離しちゃダメよ。必ず助かるから。」

翔太:「こわいよぉー…。ママー。」

早苗ナレ:「なぜあの時私は、翔太をすぐに抱き抱えなかったのか…。
      そう考えたときには、もうすでに遅すぎたの…」

早苗:「翔太、手を離さないで!……!?翔太?翔太!?」

翔太:「ぐすっ。ママー!!ママどこー!!」

ガヤ:「残されてるのは、あっちの出入り口しかもうないぞー!!」

早苗:「ちょっ、すいません!翔太!翔太どこ!?」

翔太:「ぐすっ、ママー!ママどこーー!!こわいよー!ママ!ママ!」

早苗M:「大人でも身動きが取りにくいこの水位。翔太の胸上ぐらい、早くしないと…
    あの子、泳ぐの苦手だから…」

ガヤ:「濁流に変わるぞー!!」

通行人:「どうした!?君も早く逃げろ!」

早苗:「私の息子が、取り残されているんです!まだ逃げられない。」

ガヤ:「濁流が押し寄せてくるー!早く逃げろ!!」

通行人:「君も巻き込まれるぞ!」

早苗:「あっ…あぁ!翔太ー!」

翔太:「ママー!!ママー助けてー!!……うっママーどこなのー!
    ママー!!ママー……ゲホッウッ……」

通行人:「この水位じゃ…出られなくなる前にさぁ早く!
     息子さんは助かるのを祈るしかない。」

早苗:「うぅ…翔太!!翔太!!無事でいてね!!」



自衛隊員:「大丈夫ですか?さぁこっちへ。」

早苗:「あ、ありがとうございます。」

自衛隊員:「避難所はあちらです。どうぞ。」

早苗:「翔太ー。翔太ー。」

早苗:「自衛隊さん、5歳ぐらいの男の子、見かけてませんか?」

自衛隊員:「5歳ぐらいの男の子ですか…。申し訳ありません。
     現在懸命に捜索しております。
     発見次第、お伝えできるようにしておきますので、
     こちらに、あなたのお名前とお子さんのお名前を記入してください。」

早苗:「は、はい…。」

早苗M:「あの時私の手が離れなければ…翔太…翔太どうか無事でいて。」

早苗ナレ:「自衛隊の懸命な捜索が続いているけれど、翔太が見つかったという知らせはない。
      翔太…翔太。長靴を履いて傘を持った翔太の姿が目に浮かぶ。翔太…」



自衛隊員:「すいません。佐藤早苗さんですよね?」

早苗:「あっ、さっきの自衛隊さん。翔太がみつかったんですか?」

自衛隊員:「こちらへお越しいただけますか?」

早苗M:「翔太、翔太、翔太、ごめんね。ごめんね。また、メロンクリームソーダ食べよ。」

自衛隊員:「大変申し上げにくいお話ですが、こちらのご遺体なのですが…」

早苗ナレ:「自衛隊の人が指し示した先には、翔太の遺体がそこにあった。」

早苗:「し、翔太!翔太!息をしてしっかり!ねぇ目を開けて!」

早苗ナレ:「変わり果ててしまった翔太に、声をかけても無駄なのはわかってる。
      でも、私は翔太が死んだことを受け入れることができなかった。」

自衛隊員:「間違いありませんね?」

早苗:「翔太!翔太ぁうぅ。あー!あー!翔太あー!」

早苗:「ごめんね。ごめんね。ごめんね。私が手を離したばっかりに…
    翔太。最後の抱っこよ。よしよし。うぅ…あー翔太!翔太!」

早苗ナレ:「私は翔太の遺体を抱きしめ泣き崩れた。災害で最愛の我が子を失ってしまった。
     私はどう生きていけばいいの翔太の分まで生きるね、なんて言えないよ。
     この悲しみはずっと続く。生きている限り背負って歩くのだろう。
     一生拭えない傷。この悲しみは、どこまでも、どこまでも続いていく。」


     
早苗ナレ:「あたりは落ち着き、私達は元の家に戻った。
      街並みは、あの災害がまるで何も無かったかのように、活気を取り戻してゆく。
      私は…雨音と共に、翔太の歌声が聴こえてくるような気がする。」

早苗:「翔太ぁ…翔太の小さな可愛い手のぬくもりが、この右手に残っている…」

早苗ナレ:「私はその右手をぐっと強く握り締めた…」
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